所得税の青色申告制度
Q.私は、今年から個人事業主として独立しました。所得税の青色申告制度について教えてください。
A.青色申告制度は、事業所得、不動産所得、山林所得がある個人事業主等が、一定水準の帳簿付けをして、正しい申告をした場合に利用できる確定申告の方法です。青色申告を行うことで所得金額から最大で65万円の特別控除を受けることができる、赤字(損失)が翌年以降3年間繰り越しすることができるといったメリットがあります。 事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があること等に注意してください。
(解説)
青色申告のメリット
1.青色申告特別控除
青色申告を行うことで、所得金額から最大で65万円の特別控除を受けることができます。控除金額は以下のとおり、適用要件により異なっています。
- 65万円控除
複式簿記による帳簿付けを行い(一般的には会計ソフトを利用します。)、その記帳に基づいた貸借対照表と損益計算書を添付して、申告期限(通常翌年の3月15日)までに確定申告書を所轄の税務署に提出することで認められます。なお、65万円控除の場合、e-Taxによる電子申告により提出するか、優良な電子帳簿保存を行っていることが適用要件になります。一般的な会計ソフトを利用して確定申告を行う場合、会計ソフトの指示に従って処理を行っていけば、e-Taxでの申告を行うことができるケースがほとんどですので、65万円の特別控除の適用を受けることができることになります。
- 55万円控除
上記65万円控除の場合と同様に、複式簿記による帳簿付けを行い、その記帳に基づいた貸借対照表と損益計算書を添付して、申告期限(通常翌年の3月15日)までに確定申告書を所轄の税務署に提出することで認められます。
- 10万円控除
簡易的な帳簿付けにより申告する場合に適用されます。なお、複式簿記による帳簿付けを行っている場合であっても、期限後申告になる場合には、10万円控除の適用しか認められません。
※なお、不動産所得がある方が65万円控除(又は55万円控除)の適用を受けようとする場合、不動産貸付が事業として行われていると認められる規模である必要があります。一般的に、「5棟10室基準」が「事業的規模」の目安とされます(アパートや貸家が5棟以上、またはマンションや貸室が10室以上)。「事業的規模」に該当しない場合には、10万円控除の適用となります。
2.純損失の繰越しと繰戻し
事業で赤字(損失)が発生した場合で、他の給与所得等との損益通算を行った結果、なお控除しきれない金額が発生した場合には、その損失額を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。これにより、翌年以降の所得金額を相殺して所得税額を減少させることができます。また、前年も青色申告を行っている場合には、上記の純損失の繰越しに代えて、その年に発生した損失額をその前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
3.青色事業専従者給与
副業の所得を事業所得で赤字として申告し、給与所得と通算して確定申告を行う場合には、税務調査が行われる可能性が高まることに注意してください。事業所得として申告するのであれば、事業活動が客観的に成立していることを主張するために、税務調査にも耐えられるような理屈付け、契約書類や帳簿類の整理等を行うことが必要になります。
青色申告制度を利用する場合の注意点
1.事前に届出書の提出が必要
新たに青色申告の申請を行う場合、青色申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する必要があります。なお、新規開業した場合(その年の1月16日以後に業務を開始した場合)、業務を開始した日から2ヶ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する必要があります。
2.帳簿付けに手間やコストがかかる
複式簿記による帳簿付けを行う場合には、会計ソフトを利用して行うケースがほとんどですが、一つ一つの取引を帳簿付けする必要があるため、手間がかかります。なお、会計ソフトは有料のソフトがほとんどですので、一定のコストがかかります。理屈的にはExcel等のソフトウェアを利用することもできますが、正確な帳簿付けを行うためには、市販、又は会計事務所が提供する会計ソフトを利用することが望ましいと思います。